研究概要 |
本研究は培養血管平滑筋細胞を用いて、合成ヒトエリスロポエチン(rHuEpo)の細胞増殖作用(DNA合成作用、蛋白合成作用)におよぼす影響、および細胞内遊離カルシウム濃度([Ca^<2+>]i)におよぼす影響を検 討し、腎不全患者におけるrHuEpoの血圧上昇作用の機序を検討することが目的である。 rHuEpoの血管平滑筋細胞に対する蛋白合成作用、DNA合成能については、rHuEpoは用量依存的に血管平滑筋細胞の蛋白合成能、thymidineの取り込みを増加させ、rHuEpo 50U/lで蛋白合成能、DNA合成能ともにコントロールの比し高値を示した。血管平滑筋細胞におけるエリスロポエチンの受容体の存在の有無についての検討は、^<125>I-rHuEpoを用いたbinding assayを行ったが、エリスロポエチンの受容体の存在を証明できなかった。 ヒトにおいて、血管平滑筋細胞と類似の作用を持つ血小板を用いて、rHuEpoの細胞内カルシウム濃度への影響を検討した。対象は維持血液透析患者17名、保存期慢性腎不全患者21名、未治療本態性高血圧症患者21名、正常血圧者24名であった。In vitroでrHuEpo 4,40U/ml添加前後に血小板内遊離カルシウム濃度([Ca^<2+>]i)をQuin2法で測定した。その結果、4群の[Ca^<2+>]iと平均血圧との間に正の相関(r=0.56、p<0.01)を認めた。rHuEpo 4U/ml添加では各群で[Ca^<2+>]iは変化がなかったが、40U/ml添加により維持血液透析患者および保存期慢性腎不全患者の[Ca^<2+>]iは、49±20nM、56±17nMと本態性高血圧群あるいは健常対照群(38±18nM、25±14nM)に比し有意に増加した。また維持血液透析患者群と保存期慢性腎不全患者群の[Ca^<2+>]iの増加量と平均血圧との間に正の相関(r=0.53、p<0.01)を認めた。以上の結果より、エリスロポエチンが血管平滑筋細胞に対して蛋白合成作用、DNA合成作用を有する事、これらのエリスロポエチンの血管平滑筋細胞に対する作用は、細胞内カルシウムの上昇を介することが示唆された。今回の方法では、血管平滑筋細胞にエリスロポエチンレセプターを証明し得なかったが、1996年、Ammarguellatらはrat血管平滑筋において初めてEpoレセプターの存在を証明した。
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