研究概要 |
前年度に、我々は側副血行血管発達を刺激する血管新生増殖因子であるVEGF(血管内皮増殖因子)、bFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)が心筋組織より産生・遊離され心襄液中に高濃度で存在し、心筋虚血に曝された心臓ではその濃度が上昇し血管新生に寄与することを実証し報告した。今年度は、どのような病態でVEGF, bFGFの心臓での発現量が増加するかを虚血性心疾患患者を急性虚血の有無により大別し検討した。その結果、VEGFは虚血急性期に過剰に産生・分泌され、bFGFは冠動脈疾患が存在することにより発現量が増加していた。さらに、分泌シグナルを有しないbFGFの分泌機序としてHSP 70がシャペロンとして機能しているかを心襄液中のHSP 70の濃度を測定して検討した。その結果、不安定狭心症患者では心襄中のHSP 70が非虚血性心疾患患者の約2倍に増加しており、bFGFの分泌にシャペロンとして作用している可能性が示唆された。次に、イヌの梗塞モデルを使って、徐放化の目的でゼラチンと結合させたbFGFの心筋内投与の側副血行血管発達に及ぼす影響を検討したところ、その促進効果が確認された。以上より血管新生(側副血行血管発達)を惹起するVEGF, bFGFは虚血性心疾患患者でHSP 70の発現と共に、多量に産生・分泌されている。VEGF, bFGFの徐放化による局所持続投与は効率的に側副血行路発達を促進することが期待されると結論した。
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