心不全の長期予後に対する強心薬の有効性の差異を解明するため、我々はこれまでの研究で、心不全患者血清中で上昇することが知られている腫瘍壊死因子(TNF)による細胞傷害に対する各種強心薬の効果につきマウス線維芽細胞L929細胞を用いて検討し、慢性心不全に対して長期予後改善効果がみられるベスナリノン、ピモベンダンはTNFによる細胞傷害を抑制し、細胞保護効果を示したのに対して、慢性心不全の経過をむしろ悪化させるアムリノンでは効果がみられないとの知見を得ている。今回この実験結果をふまえてTNFが細胞傷害をきたす細胞情報伝達機構のどのレベルでこれら強心薬が細胞保護効果に関与しているかにつき解明するため傷害防御蛋白であるMn-superoxide dismutase(SOD)、Cu/Zn-SODに対するmRNAの発現につき検討した。L929細胞をこれら強心薬とともに18時間培養し、ノザンブロットをおこない、βアクチンで補正したSOD-mRNA量を以下の表に示す。 以上の結果より、ベスナリノン、ピモベンダンによる心不全の長期予後の改善機序の一つとして傷害防御蛋白であるMn-SODの発現が関与している可能性が示唆されるとともに、このin vitroの実験系は慢性心不全に対して有効な強心薬の作用機序の解明、およびそのスクリーニングに有用であると考えられた。
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