心筋細胞において内向き整流性カリウムチャネル(iK1チャネル)は静止膜電位を深く保ち、カリウムの平衡電位より脱分極側で外向き電流を通しにくくすることにより心筋細胞特有の長い活動電位持続時間に寄与することが知られている。最近、我々は3種類のIRKチャネル(IRK1-3)をクローニングしたが、IRK1、IRK2が心臓に発現していた。IRK1およびIRK2チャネルはアフリカツメガエル卵母細胞発現系でそれぞれ古典的な内向き整流性カリウムチャネルを発現した。また、IRK1およびIRK2チャネルを母卵細胞に共発現し、パッチクランプ法で単一チャネルコンダクタンスおよびチャネル開閉のキネテイクスの解析をおこなったところ、両チャネルはヘテロ多量体を形成せず各々のチャネル活性を観察するのみであった。 さらに、これら3種類のIRKチャネルの脳内での機能を明らかにするために、それらの発現をin situ hybridization法により検討した。3種類のIRKチャネルはすべてニューロンに存在し、海馬、嗅球、大脳皮質に発現が見られたが、その他の分布は異なっていた。すなわち、IRK1mRNAは脳全体に、IRK3mRNAは前脳に強く発現していた。IRK2mRNAは小脳顆粒細胞に特に強い発現がみられ、三叉神経運動核、梨状葉、橋核にも存在した。これらIRKチャネルmRNAの異なる分布は脳内ニューロンの興奮の調節にそれぞれ特異的な機能を有することが示唆される。
|