研究概要 |
心筋細胞において内向き整流カリウムチャネルは静止膜電位を深く保ちカリウムの平衡電位より脱分極側で外向き電流を通しにくくすることによって心筋特有の長い活動電位を作ることに寄与していると考えられている。心筋の内向き整流カリウムチャネルを分子レベルで調べることを目的として、Northern blotで心臓に発現することが判明しているIRK1とIRK2についてこの2種類のチャネルがヘテロ4量体を形成するかどうかを両者の遺伝子をタンデムに結合させて検討したがIRK1とIRK2共にホモでのみチャネルを形成することが判明した。単一心房筋細胞および単一心室筋細胞を用いたRT-PCRによる検討をおこなったところ、心房筋、心室筋ともにIRK2は発現しているがIRK1は発現していないことが明らかとなった。恐らく、IRK1は心臓の結合組織か、もしくは内皮細胞等の非筋細胞に発現していると考えられた。したがって、本研究によりこれまでその分子レベルでの組成が不明であったiK1チャネルがIRK2によって形成されていることが初めて明らかとされた。一方、心臓にはATPによって調節されるATP感受性カリウムチャネル(K_<ATP>)がある。心臓のK_<ATP>をクローン化して他の種類のK_<ATP>と比較検討をおこない分子レベルでK_<ATP>を解明することを目的として、サブユニットであるBIRとuK_<ATP>をクローン化した。また、スルフォニル尿素受容体SUR2A,SUR2Bを新たにクローン化した。SUR2A,SUR2B共に培養細胞(HEK)においてBIRもしくはuK_<ATP>とともに共発現させることによってK_<ATP>が出現した。SUR2AとBIRはともに心臓に発現が見られるが、SUR2AとBIRを構成サブユニットとするK_<ATP>を培養細胞系に発現させ解析したところ、心臓のK_<ATP>チャネルの性質と非常に似ていることが明かとなった。以上から心臓の内向き整流カリウムチャネルを分子レベルで明らかとすることができた。
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