研究概要 |
高血圧発症における延髄腹外側部での神経伝達物質としてのアミノ酸の役割の検討するため疾患モデル動物として高血圧自然発症ラットを対象として吻側延髄腹外側部(RVLM),尾側延髄腹外側部(CVLM)でのアミノ酸動態をアンジオテンシンIITypel受容体(AT1)拮抗薬末梢投与下に脳微小透析法を用いて検討した。12週齢の雄性自然発症高血圧ラット(SHR)およびWistar-Kyoto (WKY)を対象として、ウレタン麻酔後人工呼吸器を装着した上で、腹側からのアプローチにより微小透析用プローベをRVLMに挿入した。末梢静脈内にAT1拮抗薬(CV-11974)またはニトログリセリン(NTG)を投与し、投与前後の動脈血圧を連続的にモニターするとともに脳透析液を回収し、液中のアミノ酸をHPLCで分離、定量した。SHRにおいて、各薬剤とも有意な平均血圧の低下をきたしたが薬剤間で有意な差は認められなかった。RVLMからのアミノ酸放出量は、投与前に比し抑制性アミノ酸であるグリシンがAT1拮抗薬投与後約24倍に増加した。また、GABAが約3.5倍に増加した。NTG投与は、いずれのアミノ酸放出量にも影響を及ぼさなかった。WKYでは、各薬剤ともSHRに比し軽度の血圧低下をきたしたが、RVLMからのアミノ酸放出量には変化が認められなかった。これらの結果からSHRにおいて、AT1拮抗薬のようなレニン-アンジオテンシン系阻害薬投与時に、降圧とともに血管運動中枢昇圧野からの抑制性アミノ酸の放出量増加が認められたことから、これら抑制性アミノ酸が降圧機作に関与している事が示唆された。
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