微小管は、アクチンやミオシンに接して存在するため、その重合変化はクロスブリッジ運動に作用して、心筋収縮に影響を及ぼす可能性がある。したがって、本研究では、微小管の心筋収縮および拡張不全における意義について検討した。 1)摘出心筋の発生張力における検討:心筋細胞で得られた結果が、摘出心筋でも同様に認められるかどうかを検討するため、ラットの右室乳頭標本を作成し電気刺激による発生張力を測定した。最大発生張力は微小管脱重合(コルヒチン)では不変であったが、微小管過重合(タキソ-ル、重水)により約50%低下し、この変化は可逆性であった。(第68回米国心臓病学学会にて発表) 2)心筋粘弾性特性における検討:微小管は、その重合状態を変化させ、収縮機能ばかりでなく、心筋の弛緩や粘弾性など拡張機能にも関与している可能性がある。ラットの遊離乳頭筋標本を、リニアモーター式駆動機構をもつ伸張装置を用いて伸張した時の静止張力を測定し、静止期長さ-張力関係から心筋の弾性(elastic constant;応力-ひずみ関係の傾き)と粘性(viscous constant;心筋伸張時と解放時の長さ-張力関係のヒステリシスループの大きさ)を算出し、粘弾性特性の指標とした。正常心筋の粘弾性特性は、コルヒチンには影響されなかったが、タキソ-ルにより粘性が約60%増加した。(第68回米国心臓病学学会にて発表) 以上の結果より、微小管重合の亢進は、細胞レベルばかりでなく組織レベルで、収縮および拡張不全に関与していると考えられた。
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