肥大心筋細胞の収縮能における役割 正常細胞の微小管は核周囲の濃染する線維束と細胞質全体に広がる微細な網目状構築が特徴的である。肥大心筋細胞で微小管密度の増加をみとめた。同時に、肥大心では遊離および重合チューブリン分画が増加した。このような、微小管の増加は肥大の形成に並行してみとめられ、かつ持続的にみとめられた。圧負荷肥大心の細胞レベルの収縮機能は低下しており、コルヒチンを肥大心筋細胞に作用させると、投与前にみとめられた収縮能低下が改善した。以上より、圧負荷肥大心モデルで持続的な心筋微小管の増加を認め、心筋細胞レベルの収縮機能低下に関与していることが明らかとなった。 2)心筋発生帳力における役割 正常心筋標本の最大発生帳力はコルヒチン処置では不変であった。タキソ-ルおよび重水により約50%低下し、この変化は可逆性であった。したがって、微小管の重合変化によって単離心筋細胞レベルで認められた収縮能変化は、摘出心筋の発生張力でも同様に認められ、心筋細胞微小管が心筋収縮を制御しうることが示唆された。 3)心筋粘弾性特性における役割 タキソ-ルは弾性には影響しなかったが、粘性を約60%増加させた。また、重水も粘性を増加させた。よって、微小管はは心筋の粘性を担う構築の一つであることが示唆された。さらに、低浸透圧に対する心筋細胞拡張は、微小管脱重合剤で増強され、微小管重合促進剤により抑制された。したがって、微小管は心筋細胞レベルで拡張特性を担う細胞内構築の一つであることがあきらかとなった。
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