研究概要 |
経皮的冠動脈形成術後の再狭窄予防法を開発することを目的として、その主原因の一である内膜肥厚における結合織増生の分子機序を解明するため、ラットを用いたballoon denudation後の新生内膜肥厚形成時の血管壁における各種増殖因子、転写因子の動態を検討して以下の結果を得た。 1)balloon denudation後の血管壁の変化を1日から6カ月まで検討した。新生内膜肥厚は約5日後頃より形成されるが、新生内膜肥厚の程度は約8週くらいでプラトーに達する。約2週までは主に平滑筋細胞の増殖が主体でその後は結合織の増生が主体となる。 2)結合織増生に深く関わると報告されているTransforming Growth Factor β(TGF-β)の抗体を用いた免疫組織染色にて、外膜の変化としては、controlにおいてもある程度染色されるが、次第に染色の程度が強まり、2-8週後にpeakを迎える。中膜に関しては、controlでの僅かの染色がまず減少し、2週後にやや染色性が増すがその後はまた減少する。新生内膜肥厚部に関しては、1週後より次第に染色性の増強が認められ、8週後にpeakを迎え6カ月後には減少する。 3)TGF-βの発現に影響を与えると報告されている転写因子c-myc,RBまたはNF-kBの免疫組織染色による発現の検討では、ほぼTGF-βの発現と同様の時間経過をとることが予備実験で解明されたが、詳細は現在検討中である。 4)転写因子NF-kBの発現に関しては、培養平滑筋細胞を用いて検討を行ったが、electrophoretic mobility shift assay法にて、増殖刺激因子PDGF,bFGF,EGF等では発現の増強を、増殖抑制因子TGF-β、IFN-rでは有意な発現は認めなかった。これらの結果は現在投稿中である。
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