研究概要 |
1)アルガトロバン局所投与による動脈拡張後の血管内膜肥厚および血栓形成抑制 アルガトロバン(1mg/ml)の濃縮溶液に浸したヒドロゲルバルーンカテーテルでウサギ頚動脈を拡張(6気圧,60秒)することにより血管壁障害を加えると共に、アルガトロバンを注入(アルガトロバン群:n=8)。生理食塩水に浸したバルーンで拡張したものを対照(n=8)とし、動脈拡張20日後に組織標本(elastica van Gieson)を作成し内膜肥厚度を比較検討した。また細胞起源を明らかにするため、免疫組織染色(HHF-35,HAM-56)を施行した。内膜肥厚度の指標である内膜/中膜面積比はアルガトロバン群:0.35±0.11,コントロール群:1.38±0.36と有意に(p<0.001)アルガトロバン群で小であった。また新生血管内膜内の主な細胞はHHF-35陽性、HAM-56陰性であり、血管平滑筋細胞由来であると考えられた。以上の研究成果は第59回日本循環器病学会において発表した。 また上記と同様の方法を用い、動脈拡張2時間後にバルーン接触部位の血管を摘出。組織標本を作成し、走査電顕法で観察した結果、アルガトロバン群はコントロール群に比し血小板の付着は粗であった。以上の研究成果は平成7年度日本動脈硬化学会冬季大会において発表した。 局所投与法によるアルガトロバン血管壁内濃度の経時的変化 上記と同様の方法で動脈拡張をおこなった。動脈拡張直後、5分後、15分後のバルーン接触部位の血管を摘出し、血管壁アルガトロバン濃度を高速液体クロマトグラフィー蛍光法を用いて測定した。動脈拡張直後、5分後、15分後の血管壁アルガトロバン濃度(nmole/gram of wet weight)は各々14.8,4.2,3.9であった。血管の比重を1と仮定した場合、mmole/gramはμMで置換されるため、アルガトロバンのin vitroでのトロンビン活性に対するKi値は0.04μMであることより、15分後でも高濃度のアルガトロバンが血管壁に滞留していた。以上の研究成果は第43回日本心臓病学会において発表した。
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