研究概要 |
[目的]本研究は分子生物学的手法でアンジオテンシンI変換酵素(ACE)遺伝子多型を解析し、虚血性心疾患者での発症と二次予防に関わる意義と考察するものである.平成8年度は、引き続き、健常コントロールと心筋梗塞症例を対象に、心室遅延電位を指標として左室再構築過程(リモデリング)および初回心筋梗塞の予後におけるACE遺伝子多型の意義について検討した.[方法]白血球よりDNAを採取し、PCR法でACE遺伝子多型を判定した。加算心電図で心室遅延電位の有無を判定した.又、手紙によるアンケート調査を行い、初回梗塞後の心事件および心室遅延電位の有無とACE遺伝子多型との関連についてKaplan-Meier法で解析した.[研究実績](1)アンジオテンシンI変換酵素(ACE)遺伝子多型DD型は、日本人虚血性心疾患でも新たな冠危険因子になりうる(Circulation、1994).(2)low risk(TC<260mg/dl,HbAlc<9.0%,BMI<26)の心筋梗塞症における初回梗塞後の心事件の総頻度は、II型群34例中7例(20.6%)、ID型群71例中15例(21.1%)、DD型群58例中21例(36.2%)であった.Kaplan-Meier法による解析で、ACE遺伝子型DD型群の心事件の発生はII型群とID型群に比べて多い傾向にあった(武者毅彦と共著、岩手医誌1997,in print).(3)ACE遺伝子多型DD型で心室遅延電位陽性例は多く、ACE遺伝子多型は左室モデリングに関連した(Nakai K et al.A.N.E.1:405-410,1996.[考案]ACE遺伝子多型DD型は、心筋梗塞症の発症や初回梗塞後の心事件の発生および左室リモデリングに関わる新しい因子となりうると考えられた.
|