研究課題/領域番号 |
07670805
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研究機関 | 慶応義塾大学 |
研究代表者 |
三田村 秀雄 慶應義塾大学, 医学部, 助教授 (70129675)
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研究分担者 |
高月 誠司 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (60245470)
末吉 浩一郎 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (00235839)
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キーワード | 心筋梗塞 / 心室性不整脈 / ACE阻害薬 / β遮断薬 |
研究概要 |
前年度は心筋梗塞の亜急性期にβ受容体刺激が局所不応期の不均一性を増加させ、不整脈誘発性を高めるのに対し、β受容体遮断がそれに拮抗する効果を示すことを明らかにしたが、本年度は梗塞心筋の不整脈源性基質に対するアンジオテンシンIIの影響を検討した。まず雑種成犬に心筋梗塞を作成した後、右室流出路にペーシング用電極を、梗塞部心外膜表面にマッピング電極を装着し、閉胸した。翌日よりACE阻害薬のエナラブリル10mg経口を開始し、1週および2週間後に基本周期300msecで右室連続刺激を行い、47点における単極記録から興奮回復時間を、双極記録から興奮到達時間を計測した。両者の差を局所QT時間として、その不均一性を定量的に評価した。また2連続期外刺激法により心室性不整脈の誘発を試みた。対象として無投薬犬を交互に用い、同様の検討を行った。その結果無投薬犬においてすでに不応期不均一性の指標としてのQT標準偏差は1週後の時点で20msec以上あったのが2週目には10msec以下になり、不整脈の誘発率も低下し心室細動は誘発されなくなった。ACE阻害薬投与群においても同様に不整脈源性基質の改善が経時的に観察されたが、それが本剤固有の作用によるものか自然経過によるものかについては証明できなかった。我々は同時期に慢性心不全患者64例を対象とした平均4.4年の後ろ向き臨床調査を行ったところ、5例に突然死を認めたが、いずれもβ遮断薬やACE阻害薬を服用していない22例の群に含まれていた(22.7%)。これら薬剤服用群では左室駆出率の改善と共に心室性不整脈も減少する傾向が認められた。臨床例ではこのようにACE阻害薬の左室機能および不整脈に対する好ましい作用が観察されたが、梗塞犬においては2週間の時点ですでに不整脈源性基質がかなり改善されており、より長期の観察を行ってもその抗不整脈効果の解明は本モデルでは困難であると判断された。
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