研究概要 |
本年度の研究実施計画 平成7年度の研究結果より,Na+-H+交換系の特異的阻害剤である5-(N,N-dimethyl)-amiloride(DNA)が開胸ブタ虚血再灌流モデルで心筋壊死を100%予防することが証明された。本年度は、この壊死予防効果が、虚血の改善によるのか、または再灌流障害の予防によるのかを評価するため、DNA投与を再灌流5分前に行い、壊死抑制効果があるか否かを検討した。 方法 1.体重30〜40kgのブタ(10頭)をketamine(20mg/kg)およびatropine(0.05mg/kg)にて前麻酔後sodium thiopentobarbital静脈内投与(20〜25mg/kg)し、以後持続注入にて麻酔を継続した。頸部より皮膚切開し、気切下に呼吸管理した。 2.右内頸動脈より左室内圧を、外頸静脈より、スワンガンツカテーテルを挿入した後に、左内頸静脈より、右心房内に心房ページング用電極カテーテルを挿入し、150bpmで心房ページングを行った。 3.正中開胸し、心膜切開後左冠動脈前下行枝を第二対角枝近位部で剥離し、欠陥結紮用のゴム紐を通した。虚血部と思われる所に心筋壁厚測定用超音波プローブを装着した。 4.冠動脈を結紮後、24分にDNA 1mg/kgをbolusに静注し、以後は0.05mg/kg/minで持続静注した。虚血30分に結紮を介助し、再灌流を行った。コントロールでは、生食を投与した。 5.再灌流3時間後再び冠動脈を閉塞し、ブルーダイを左室内に注入後、心摘出を行い、TTC染色法で梗塞範囲を測定した。 結果 血行動態、虚血部の壁運動には群間差を認めなかった。心筋梗塞サイズはDNA投与群で12.8±6.2%、コントロール群で55.4±15.6%であり明らかに治療群で梗塞巣の縮小を認めた。前年度の結果と併せて考えると、DNAの梗塞縮小効果は、主に再灌流時の心筋障害を抑制しているためであると考えられた。
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