平成7年5月より、平成9年1月末までに初回心筋梗塞の連続例で合計222例のACE遺伝子多型の同定が終了している。このうちDD型が31例(14%)、ID型が103例(46%)、II型が88例(40%)であった。院内死亡は21例に認められた。 発症24時間以内に入院し発症日の心エコー記録と、発症14日まで生存し発症14日目における心エコー記録の両方が得られた症例は73例であった。発症14日目までの早期左室拡張(この期間での20%以上の左室拡張末期容量の増加)は、20例(27%)に認められた。DD型で早期左室拡張を来したものは7例中2例(29%)、ID型では41例中12例(29%)、II型では25例中6例(24%)で、早期左室拡張はDD、ID、II群間で差を認めなかった。 一方、発症14日目と発症1年後の心エコー記録が実施し得たのは、現在まで50例で、うち左室再構築(1年目での20%以上の左室拡張末期容量の増加)が認められた例は、10例(20%)であった。DD型で左室再構築を来したものは4例中1例(25%)、ID型では28例中5例(18%)、II型では18例中4例(22%)で、左室再構築においてもDD、ID、II群間で差を認めなかった。 今後は、平成8年に入院した患者において1年後の心エコー記録を実施する予定であるが、現在までの結果からは、当初の"DD型に早期左室拡張や左室再構築が多い"という仮説は否定的である。しかし、DD型に1年後の左室再構築が多いという報告があり、左室再構築の定義上の差のためなのか今後の症例を含めて検討する予定である。もし、私達の現在までの検討どうり、陰性の結果であれば、ACE遺伝子I/D多型の同定は、少なくとも将来の左室再構築やACE阻害剤の薬効の差についての予測には役立たないという結論にて投稿を予定している。
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