研究概要 |
虚血性心臓病を中心にHDLの量的、質(機能)的、遺伝的解析から、どのような場合に動脈硬化の危険度がどれだけ上昇するかを検討した。【研究1】(LDL)及び(VLDL)除去後血清でのコレステロールエステル比率(FERHDL)と冠動脈硬化(CA)との関係を検討した。【対象】冠動脈造影を行った患者でCA(+)(75%以上狭窄,n=184、年齢62.2【plus-minus】7.9才)とCA(-)群(狭窄なし、n=74、年齢62.1【plus-minus】7.2才)。【結果】CA(+)群ではCA(-)群と比し、喫煙者が多く、年齢と性別で補正したHDL-Cの平均値が有意に(p<0.05)低く、FERHDLの平均値が有意に(p<0.05)高かった。CA(+)群及びCA(-)群において、HDL-CとFERHDLが強く負相関したが、多変量回帰分析によると両群間の回帰係数が有意に異なった。FERHDL/HDL-Cの上昇に従ってOdds比も高くなった。相対危険率、FERHDLとHDL-Cの三次元分析の結果では、FERHDL/HDL-Cが一番高値である、低HDL-Cと高FERHDLを持つ患者のOdds比がFERHDL/HDL-Cが一番低値である、高HDL-Cと高FERHDLを持つ患者の12.6倍だった。【総括】FERHDL/HDL-CまたはHDL-Cが低値の場合のFERHDLがCAの有利な診断指標 【研究2】虚血性心臓病患者におけるアポAI、アポAIV、アポCIII遺伝子に関する研究【対象】上記同様の患者、正常者を用いた。【方法】対象者末梢血(BDTA採血)500ulより抽出したDNAをPCR法を用いて増幅後、各種制限酵素を用い解析した【結果】アポAIV/MspI多型(allele 1,2頻度)は正常群で0.887,0.113,患者群で0.884,0.116とほぼ同率だった。アポAI、アポCIII遺伝子多型(アポAI/5'-promoter、アポCIII/3'SstI)と今回のアポAIV/MspI多型分布を同時に解析した結果、それぞれgenotype 1/1、2/2、1/1の連鎖が患者群に多くみられた。【総括】アポAI、アポAIV、アポCIIIの遺伝子多型が冠動脈硬化発症に関与する可能性がある。
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