研究概要 |
全身型カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼII異常症の日本人家系の遺伝子解析をおこない,4種類の遺伝子変異を見つけだした。このうちの,1種類の変異は従来から報告されている遺伝子多型であった。また,さらに1種類の変異は日本人で認められる遺伝子多型であった。残る2種類の変異が,単なる遺伝子多型であるか,病因となる遺伝子変異であるかどうかを確認する目的で,以下の研究をおこなった。PCRのプライマーに変異を導入し,mRNAからRT-PCR法を用いて増幅したPCR産物が制限酵素部位を有するかどうかで,その変異が存在するかどうかが判定できる迅速診断法を開発し,この方法を用いて日本人正常対照者を対象に検討したところ,対照者ではその変異を認めなかった。さらに,この2種類の変異はカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼIIタンパクの2次構造に著明な変化をきたすと予測され、それぞれが病因となっている可能性が非常に高いと結論された。以上の研究成果をJournal of Human Geneticsに発表した(印刷中)。さらに,病因と考えられる遺伝子変異がタンパク質レベルでどのような異常をきたすのかを検討するための基礎実験として,高いタンパク発現効率を有するpCAGGSplasmidに野性型カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼII cDNAを組み込み、これをCos-7細胞にトランスフェクションした。この遺伝子導入により,Cos-7細胞のカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼII活性を遺伝子導入前の4倍程度に増加させることに成功した。このことにより,カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼII遺伝子の変異が酵素タンパク質にどのような異常をもたらすのかを検討するための基礎が確立された。
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