研究概要 |
既に本施設で行われた免疫不全症患児への幹細胞移植は重症複合免疫不全症(SCID)5症例、Wiskott Aldrich症候群(WAS)3症例であり、全例T細胞除去による幹細胞のnegative selection法で行われた。SCID2症例,WAS1症例が生存中である。免疫能の完全な再構築はWAS1症例のみに認められ本療法での治療の成果が十分に得られていない。このうちSCIDの2症例について幹細胞移植によるB細胞の成熟分化について検討した。T細胞は生着をみているが、B細胞に関してはIgH遺伝子の多様性が正常B細胞に較べ劣っている結果が得られた。(Bone Marrrow Trans.1995) CD34免疫ビーズによる単離法では86%の純度で幹細胞が得られている。単核球を除去すると、95%以上に分化が可能である。この幹細胞はCD38 92%,HLA-DR89%,CD3365%陽性であり多くは骨髄球系幹細胞と考えられる。 CD34陽性幹細胞はSCF,GCSF,erythropoietin,Thrombopoietin添加で培養するとCFU-GM,CFU-Meg,CFU-Eの培養は可能であった。リンパ球への分化を誘導するIL-2,IL-4,IL-6,IL-7の添加下でCD34陽性細胞を培養したがリンパ球系への分化は形態的にも、細胞糖蛋白の解析、IgH遺伝子、TCR遺伝子の解析でも認められなかった。今後は間質細胞との培養が必要と考えられた。 WAS症候群では幹細胞のレベルでの細胞骨格の異常が考えられており、現在WASP遺伝子との関係を特に血小板産生機序について検討を開始している。
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