末梢血好塩基球表面にはFcεRIが強く発現されている。しかし、その発現調節機構に関しては不明のことが多く、特に小児末梢血好塩基球表面のFcεRI発現に関して検討した報告は見当たらない。本研究では、新生児ならびに種々の年令の小児末梢血好塩基球表面のIgE結合ならびにFcεRI発現をフローサイトメトリーにより評価し、さらにIgEによる発現調節機構を検討した。また血清中IgE濃度を単クローン抗体を用いた高感度ELISA法により定量した。好塩基球表面IgE結合は正常対照に比し、アレルギー疾患群で著明な高値を示し、その差は低年令群においてより顕著に認められた。表面結合IgEは血清IgE濃度とよく相関し、血清IgEが100ng/ml前後で急速に好塩基球表面結合が増加し、300ng/ml付近でほぼプラトーに達した。新生児臍帯血では表面IgE結合を示す細胞はほとんど検出できなかったが、高濃度のIgE存在下で短時間培養することにより急速にIgE結合が観察され、長時間の培養によりさらにIgE結合が増強された。好塩基球のFcεRI発現は表面IgE結合と同様、血清IgE濃度に強く依存した。臍帯血中好塩基球表面のFcεRI発現は極めて低値であったが、高濃度のIgEを添加し培養するとその発現が増強した。このような発現増強は温度ならびに蛋白合成に依存性であり、de novoの蛋白合成を必要とすると考えられた。しかし、臍帯血におけるFcεRIα mRNA発現は構成的に認められ、IgE添加によっても著明な増強は認められないことより、転写レベル以外の調節機構が関与していることが示唆された。
|