1.Apoptosisに対する細胞の感受性は、細胞の分化段階により異なる。本研究では、種々の白血病細胞株や患者から得た白血病細胞を、抗癌剤やCaイオノフォアで処理し、Apoptosisの程度を調べた。その結果、白血病細胞株では、その感受性は骨髄芽球性、Bリンパ芽球性、Tリンパ芽球性由来の順であった。一方、患者由来の白血病細胞では、Tリンパ芽球性、骨髄芽球性の順にApoptosis感受性で、小児に多く見られるcALLの細胞は感受性が最も低かった。 2.Apoptosisは、二つのタイプのDNA切断-Nucleosome単位の低分子の切断(LMW-DNAと略)及び高分子300-50kbDNAの切断(HMW-DNAと略)-を特徴とするとされている。そこで、これらの白血病細胞(株)に於て、これらのDNA切断を司る内在性のEndonucleaseの活性を、Autodigestion法を用いて検索した。その結果、骨髄芽球性、Tリンパ芽球性由来の細胞株共、それらのApoptosis感受性が異なるにも拘わらず、細胞質にLMW-DNA、HMW-DNAの両者をおこすEndonucleaseが証明された。しかし、そのイオン要求性は異なり、前者はMg^<2+>依存性、後者はCa^<2+>依存性であった。一方、患者由来の白血病細胞の全てにも、細胞質にLMW-DNA、HMW-DNAの両者をおこすEndonucleaseが検出されたが、cALLやTリンパ芽球の形質を持つものはMg^<2+>依存性であり、骨髄芽球の形質を持つものはMg^<2+>/Ca^<2+>両者を活性発現に要求した。更に、一部のcALLや骨髄芽球では、その核にもMg^<2+>/Ca^<2+>両者依存性のEndonucleaseが存在した。これらのEndonucleaseは、いずれもZn^<2+>やAurintricarboxylic acidにより阻害された。 3.今後、これらのEndonucleaseの精製に努めると共に、どの酵素が実際に白血病細胞のApoptosisに関与しているのかを明らかにしたい。これら細胞死のメカニズムに関する一連の研究は、小児白血病の治療成績の向上に寄与すると考える。
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