研究概要 |
動物実験において腎疾患にmatrix metalloproteinase (MMP)が関与することが報告され、注目されている。しかしながら、臨床医学の場において、腎炎の発症や増悪とMMPやMMPの阻害物であるtissue inhibitor of metalloproteinase (TIMP)の関係について検討した報告はない。MMPは基底膜構成成分である4型コラーゲンをはじめとするマトリックスを分解する酵素で、マトリックスの産生と分解のバランスが障害されれば、腎炎や糸球体硬化をきたすことが明らかになっている。現在、我々はMMPやTIMPがヒトの腎炎の発症、増悪の次期においてはたす役割について検討している。 泌尿器科の協力を得て腎摘出患者の健常部のサンプルを得、これをマイクロダイセクションして糸球体培養上清中のMMP,TIMPの産生量を検討した。健常腎の糸球体培養上清ではMMP活性は認めなかった。次に、腎生検の際に得られた小児腎炎患者の糸球体を培養し、zymogramを行ったところ、MMP-2,MMP-9と考えられるバンドが検出された。また、MMP-2,MMP-9の存在はウエスタンブロット法でも確認された。 尿中MMP-2は健常人でもみられたが、MMP-9は増殖性腎炎患者でみとめられた。健常腎糸球体に認められないMMR-9が増殖性腎炎の糸球体で出現していることが示唆された。
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