研究概要 |
マイクロダイアリシス法を用い,生後7日のラット新生仔の線条体におけるドパミンとその代謝産物の細胞外液濃度の低酸素負荷(8%O_2)と再酸素化による変化と,一酸化窒素(NO)の役割について研究した.線条体におけるhydroxyl radical (^-OH)の測定については,灌流液中に加えたサリチル酸が、^-OHを捕獲して生ずるdihtydroxybenzoic acidをHPLC-ECD法で定量することによる測定を試みた.低酸素負荷によるドパミン代謝に対するNO合成基質であるL-アルギニンまたはNO合成阻害剤(N-nitro-L-arginine methyl ester, L-NAME)の局所投与を併用した場合の効果について検討した.さらに,高濃度のカリウム(100mM)のリンゲル液で局所灌流することによる脱分極刺激に対するドパミンと^-OHの濃度の変化とそれに対するL-NAMEの効果についても検討した.低酸素負荷やカリウムによる脱分極刺激により細胞外のドパミンと^-OHの濃度は一過性に上昇を示し,L-NAMEの投与はいずれの負荷によるドパミン濃度の上昇をも有意に抑制した.L-アルギニンの投与はこれらの変化に対して影響を示さなかった。これらの結果より,低酸素負荷や脱分極刺激による線条体ドパミン濃度の上昇には少なくとも一部はNOが促進的に関与していることが明らかとなり,NO合成阻害剤の投与はドパミンの細胞外への過剰な蓄積を軽減することによっても低酸素による神経細胞障害を防ぎうる可能性が示唆された. これらの成果は,平成7年度には第98回日本小児科学会学術集会(岐阜),米国小児科学会,第37回日本小児神経学会(大津)に於いて発表し,現在,英文誌への投稿の準備中である.
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