研究概要 |
背景及び目的:免疫器官としての消化管の役割を解明する目的で、平成7年度には、消化管上皮細胞に細菌、ウイルスを感染させる系を用いて、上皮細胞におけるケモカインファミリーのmRNAの有無と、これらのmRNAから蛋白レベルとしてのケモカインが合成されるのか否かについて検討した。この結果細菌あるいはウイルス感染により消化管上皮細胞の産生するケモカインのパターンには差が認められ、このことが様々な感染刺激に対する局所の炎症細胞の動員、さらには炎症反応の差をもたらす原因の一つと考えられた。以上のことをふまえて、平成8年度には上皮細胞から産生されたケモカインが蛋白レベルで機能を有するか、否かについて検討した。 方法:(1)培養消化管上皮細胞(T84,HT29,CaCo2)にサルモネラ菌を感染させ、培養後、上清を集め、ELISA法によりIL-8濃度を測定した。(2)IL-8濃度をさらに濃縮させるために超高速遠沈法を用いて、所定のIL-8濃度を有する培養上清を作製した。(3)ヒト末梢血から好中球を採取し、濃縮上清を加え短期培養を行なった。(4)Fluorescence Activated Cell Sorting (FACS)を用いて、好中球細胞表面のCD11b/18,Leu8(L-secletin)の発現の変化を検討した。 結果:濃縮培養上清で刺激された好中球の表面形質の検討でCD11b/18の発現は増加し、L-secletinの発現は低下した。この増加及び低下は抗IL-8抗体で処理することにより部分的に抑制された。 考案:培養上清中のIL-8蛋白は、好中球活性化機能を有しているが、この活性化機能はIL-8単独ではなく、他のサイトカインの関与も考えられた。
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