研究概要 |
(1)インスリン依存型糖尿病(IDDM)の予知に関する研究 我々は、1993年4月よりカリフォルニア大デ-ビス校(責任者;JS Soeldner教授)とIDDMの予知に関する共同研究を行ってきた。対象は小児期発症IDDM患者の第I度近親者(親、同胞、子)で、膵島細胞成分に対する自己抗体であるICA(islet cell antibodies)とIAA(insulin autoantibodies)を測定している。これらの自己抗体はIDDMのハイリスクグループにおいてはその発症前から検出されることが知られている。本邦の20倍以上のIDDMの発症率を有する欧米ではハイリスクグループの予知に関する研究が進んでいるが、本邦ではこれらを対象にした大規模な研究はなされていない。 1996年1月現在、IDDM患者の親140名、同胞202名、子9名の計351名の初回検査を終えており、これらのうちICAの陽性者はそれぞれ3名(1.4%)、4名(2.0%)、0名で、IAAの陽性者はそれぞれ4名(2.9%)、8名(4.0%)、0名であった。このうちICAが80JDF Units以上でIAAが227nUnit/mlでともに高値を示したIDDM患者の妹は、この検査後4カ月でIDDMを発症した。また、56名については2回目の検査を終了しているが新たにICAとIAAが陽性の者が1名ずつ発見された。 今後も継続して本研究を行い、IDDMの発症に至る経緯の人種差を検討していく。また、ICA、IAAにGAD抗体などの他の免疫マーカーやHLAなどの遺伝マーカーを組み合わせることにより、予知の精度がどう変化するかを調べていく。 (2)IDDMの予防に関する研究 当科では従来NODマウスやBBラットなどのモデル動物を用いたIDDMの発症予防の研究を行っており、immunomodulatorのβ-1,6;1,3 D-glucanの投与が発症を抑制することを報告してきた。また、一昨年よりインスリンと約65%共通のアミノ酸配列を持ち血糖降下作用も有するIGF-Iの投与実験を進めているが、さらに検討すべき点も残っているものの、NODマウスにおける初期の大量投与は顕性糖尿病の発症を予防するというpreliminary dataを得ている。
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