研究概要 |
我々は1994年度に,喘息の重要な化学伝達物質であるロイコトリエンC4(LTC4)の産生は,LTC4合成酵素蛋白が遺伝子レベルで活性物質により制御されることによって調節されているという仮説を肥満細胞のモデル細胞であるRBL細胞を使用し検討した.その結果、活性ビタミンAであるレチノイン酸に強力なLTC4合成酵素蛋白の選択的誘導作用があることを見いだし報告した(1)(2).また,その誘導はグルココルチコイドのひとつであるデキサメサゾンによる抑制されることを明らかにした(3).すなわちLTC4合成酵素の選択的な蛋白レベルでの調節機構が存在することをはじめて証明した.今年度は,更にその機構の解析をすすめ,LTC4の合成に関与している3つの酵素,PLA2,5-lipoxygenase,LTC4 synthaseのmRNAの発現をNorthern blotting法を用いて解析し,この制御が,LTC4 synthaseの特異的,選択的な誘導(transcriptional regulation)によりおこなわれていることをはじめて証明した(submitted to Journal).また,種々の免疫抑制作用を有する物質(FK506,サイクロスポリン,LTC4が産生の調節をうけるかどうかについても検討したが,FK506,サイクロスポリン,いずれもLTC4の産生を抑制することが判明した(4)(5).しかし,その抑制の詳しい機序に関しては,現在までにわかっている機序によるものではないことが判明したのみで,来年度の研究課題となった.LTC4は,喘息をはじめとするアレルギー疾患の発症にきわめて重要な役割を果たしていることが判明している.したがって,この代謝系制御の機構の分析,および薬物による修飾の解析は,アレルギー疾患治療に有用であると考える(6).是非,次年度もこの研究を押し進めたい.(番号)は裏に示した研究発表を示す.
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