研究概要 |
[研究目的]P300および反応時間の半球優位性はどの年齢から生じるのかを明らかにする。 [方法] (1)視覚刺激として有意単語(言語性)、相貌、視空間パターン(非言語性)、色彩を作成し、タキストスコープによる視野別呈示を行い、P300および左又は右手による反応時間を同時記録する。 (2)小児では頻回の繰り返し試行が困難であったので、単一試行のP300測定を可能にする。 (2)P300の潜時、振幅、及び反応時間の年齢による発達を検討する。 (3)刺激の種類(言語性、非言語性)×呈示半球(左視野、右視野)×反応手(左、右)の組み合わせからP300潜時、振幅、反応時間の半球優位性(laterality)を求める。 [結果] 6歳から12歳までの正常小児40名と成人20名の事象関連電位と反応時間を測定した。小児例では測定した40例中信頼できるERPが得られたのは25例であった。これらをI群:6-7歳(小学1・2年),II群:8-9歳(3-4年),III群:10-12歳(5-6年)の3群に分け、各群のP300について比較検討した。 1)成人例では平仮名刺激を右視野(左半球)に、相貌または視空間点刺激を左視野(右半球)に呈示した時、反対側呈示に比べP300振幅が大であった。 2)成人例ではボタン押し反応時間は平仮名刺激で左半球呈示-左半球応答が最短、右半球呈示-右半球応答が最長であり、視空間点刺激では逆の関係を示した。 このことは、視覚刺激の認知・弁別に関する優位半球が言語性刺激では左半球に、非言語性刺激では右半球にあることを示唆すると思われた。 3)小児例では平仮名刺激では3群とも成人と同様、右視野(左半球)に刺激呈示した時、反対側呈示に比べP300振幅が大であった。視空間点刺激ではII群・III群で成人と同様左視野(右半球)に刺激呈示した時、反対側呈示に比べP300振幅が大であった。相貌刺激では3群ともむしろ平仮名刺激と同様の傾向が見られ成人と逆の結果が得られた。
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