研究概要 |
1 中枢神経系CPTIIが肝由来と異なる脳型isoformであるかどうかの検討。 ヒト肝から分離・精製した酵素CPTII(信州大学生化学教室、橋本隆教授から供与)をウサギに免疫後、CPTII抗体を作成した。 免疫組織化学染色では、ヒト肝でペルオキシダーゼ法によってCPTIIが確認された。一方、中枢神経組織(大脳・小脳)および骨格筋では、CPTII抗体量を増やしてもCPTIIを確認できなかった。またimmunoblottingを用いても反応するバンドは得られなかった。中枢神経組織・骨格筋のCPTIIは肝由来とは異なるisoformと思われた。 2 脳型CPTII抗体の作成と脳内におけるCPTIIの分布・局在解析。 (1)脳型CPTIIの分離・精製 Miyazawaらの方法(J.Biochem.94:529-542,1983)に準じて、ヒト剖検脳からCPTIIの分離・精製を試みたが、脳では肝組織と比べミトコンドリア含有量が少なく、また単一の蛋白としてCPTIIを分離・精製できなかった。 (2)脳内におけるCPTIIの分布・局在解析は、脳型CPTIIの精製ができなかったため脳型CPTII抗体の作成に至らず分布・局在解析は検討できなかった。 3 脳型CPTII欠損症における遺伝子異常の解析。 筋型の変異(Ser-113-Leu)は、脳型CPTII欠損症の2家系には存在しなかった。検討した2家系のうち1家系に(Val-368-Ile)の変異を認めた。この遺伝子変異はReye様症候群をきたした症例の遺伝子変異としてTaroniらにより報告済であった。残る1家系で(Phe-352-Cys)の変異を認め、有意な遺伝子変異と考え報告したい。
|