早産児における終日睡眠・覚醒機構の定量化を行うことを研究目的として、当該研究期間において(1)24時間脳波(2)24時間呼吸波形(3)圧電素子を用いた眼球運動検出の解析を行なった。(1)については24時間連続記録脳波の不連続性を、コンピュータを用いた自動定量化システムを開発し、一定区間の不連続性の程度、その最大値などの描出が可能となった。さらに、自己回帰解析によって、脳波パラメータ(MinAICma、トータルパワー、δパワー)の特性値から、受胎後30週以降の早産児においては、静睡眠と動睡眠の明確な機構化が認められ、自動的な静睡眠の検出が可能となり、受胎後週数の増加に伴う静睡眠の出現頻度の減少を確認した。(2)については、24時間呼吸波形を自己回帰モデルを用いて解析し、静睡眠期では動睡眠期に比して、呼吸波形減衰時間は延長しており、AICとともに静睡眠の検出は十分な敏感度・特異度を持って可能であった。さらに、正規化AICを用いると、体位などによる振幅の影響を除外した呼吸波形規則性の定量化が可能となった。24時間正規化AICによって、受胎後週数の増加に伴い、呼吸波形がより規則的になることが示された。呼吸波形について、頭蓋内出血などの周生期脳障害例においては、正常早産児に比して24時間呼吸波形のAICの変動は小さく、睡眠周期の異常が示唆された。(3)については、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)による圧電フィルムを用いての眼球運動検出を試みた。この圧電センサーを用いた眼球運動検出法は、これまでの報告にはなく、通常記録法であるEOGに比して精度の高い検出が可能となった。研究期間においては、ポリグラフ記録のみの自動検出の検討であったが、頬部の圧電センサーを併用することでアーチファクトの除外が可能となり、振幅・持続時間による自動検出が可能となった。今後は体動検出方法を加えて、より精度の高い睡眠自動判定システムに発展させることが検討課題である。
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