研究概要 |
成人T細胞白血病ウイルス(HTLV-I)の母児感染に関する研究を1986年1月より行い,これまで母児感染のリスク要因を検討してきた。 《結果》 (1)母児感染要因として最も重要なものに,長期母乳哺育がある。これはこれまで報告してきたように,本年度もキャリア妊婦より出生した児の栄養法と感染率を検討した結果,長期母乳哺育児(7か月以上)が有意に感染率が高く,短期(6か月以内)母乳と人工乳哺育児では差がないことが確認された。 (2)母親のHTLV-I感染リンパ球(末梢血ないし母乳中)を培養した場合,抗原陽性細胞が高率に増加する群(high HTLV-I antigen-producing mothers)が,増加の低率群(Low HTLV-I antigen-producing mothers)に比べ,高率に児のキャリア化が起こっていることが新たに判明した。 (3)児の抗腫瘍免疫学的検討は現在検討中である。キャリア化(感染)した児の数が少ないため,まだ評価可能な結果は得ていない。キャリア化した児の末梢血中の可溶性rIL2-Rの測定,CD25,CD26,HLA-DRの発現,末梢血単核球培養上清中のIFN-γ,TNF-β,IL-6などのサイトカインも検討中である。
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