研究概要 |
本年度は臍帯血造血幹細胞移植の臨床応用へ向けて,臍帯よりの血液の採取量の検討,そのなかに含まれる造血前駆細胞の測定および保存についての基礎的検討を行なった。 臍帯血の採取は遺伝的疾患や感染症のない正常妊娠経過,正常分娩の臍帯より母親の同意を得たうえで行なった.今回施行した採取法はACDを加えた50mlの注射器で臍帯静脈を直接穿刺採取する方法である.この方法では胎盤一つから採取可能な臍帯血は30-60(30,35,40,40,47,60)mlで平均45mlであった。臍帯血採取については工夫をかさねてさらに採取率をよくする必要がある。 採取した血液の一部を用いてHLA-A,B,C,DRの検査を行ないHLAの適合した症例がいる場合に備えて,臨床応用可能な体制をとっている. Ficoll-hypaqueを用いた比重遠沈法にて分離した後の単核細胞数は6-12.5(6,8.75,10,10,10,12.5)x10^7個で平均10x10^8個であった.得られた単核細胞はプログラミングフリーザ-にて凍結した後,液体窒素中に保存している. 採取された造血前駆細胞の総数は、CFU-GMで0.2-4.79(0.2,1.36,1.59,1.88,4.79)x10^5個,BFU-Eで0.15-3.31(0.15,1.53,1.65,1.99,3.31)x10^5個であった。臍帯血中のCFU-GM由来コロニーは骨髄中のCFU-GMに比べて、大型のコロニーを形成しており、high potentialな造血幹細胞の存在が示唆された.またBFU-Eについても骨髄に比べて臍帯血ではより早期にBurstの形成がみられた. 今回採取された臍帯血造血幹細胞を用いた場合の臨床応用は,CFU-GMを基準にした場合,最小採取検体を除外すれば20-40kgの体重の患者に移植可能と考えられる.
|