研究概要 |
(1)t(3;21)を持つ急性骨髄性白血病細胞を解析したところ,AML1遺伝子とEVI-1遺伝子の融合が確認された.本症例は固形腫瘍の治療終了後に発症した二次性の白血病であり,治療に抵抗性で早期に死亡した. (2)腕内転座3q21q26を認めた急性骨髄性白血病症例においては血小板数の著増がみられたが,巨核球増殖因子(TPO)の発現は認められなかった. (3)われわれがt(17;19)を伴う急性リンパ性白血病患者より樹立した株化細胞の染色体転座部位の遺伝子配列を決定したところ,E2A遺伝子のエクソン13とHLF遺伝子のエクソン4が240bpのランダムな塩基配列を介して結合したタイプ1の融合遺伝子と,E2A遺伝子のエクソン12とHLF遺伝子のエクソン4が直接結合したタイプ2の融合遺伝子が検出された.同一症例でふたつのタイプの融合遺伝子が検出されることはまれである. (4)E2A-HLF融合遺伝子に対するホスホロチオエ-ト型アンチセンス・オリゴヌクレオチドを上記株化細胞に導入したところ,DNA合成能(3H-thmidine uptake)の低下が観察された.この実験結果よりE2A-HLF融合遺伝子産物が白血病細胞の増殖に促進的に作用していることが明らかになった. (5)t(16;21)を伴う急性骨髄性白血病細胞においてTLS/FUS遺伝子とERG遺伝子の融合遺伝子を検出した.t(16;21)症例は比較的まれであり,全国的な調査では成人・小児合わせて19例の存在が確認され,うち18例が早期に死亡していた. (6)HLA一致血縁ドナーが得られなかったt(8;21)転座を伴う急性骨髄性白血病症例に対し末梢血幹細胞移植を施行した.移植直前の骨髄,および移植した単核細胞中にMTG8/AML1の融合遺伝子が検出され,微小な白血病細胞の残存(MRD)が確認された.t(8;21)症例では寛解期にもMRDが検出されるとの報告があるが,移植細胞中にMRDが検出される場合は,移植の適応を十分に検討する必要がある.
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