[要旨]離乳期家兎に作成した川崎病類似の冠状動脈炎モデルA群と同モデル遠隔期のコレステロール負荷B群及び無処置家兎にコレステロール負荷C群の冠状動脈変化について経時的に病理組織学的所見を検討した。[結果]A群では、動脈炎惹起1週間後をピークに単核球系細胞を主とする炎症性細胞浸潤を伴うアレルギー性冠状動脈炎が発生し、その後病変は軽減した。しかし、実験経過の3ヶ月後まで少数の平滑筋細胞を含む線維性内膜肥厚の存続が確認された。一方、3ヶ月後から2ヶ月間、5%コレステロール食を投与したB群とC群の冠状動脈では、多数の泡沫細胞や平滑筋細胞を伴う高度な内膜肥厚と内径狭小化が共通して認められたが、その程度はB群でより強く観察された(p<0.025)。なお、内皮下へ遊走した抗平滑筋抗体陽性細胞の出現頻度については、内膜病変局所(Carzeiss社製)にて計測し、1〜4度の重症度評価を行った。左右冠動脈のうち、各個体でもっとも強い病変を選んだところ、B群が1.94±1.53(n=8)、C群が0.7±0.95(n=5)を示し、B群が有意に高かった(p<0.025)。また、左右冠動脈別に評価したところ、左冠動脈ではB群が2.5±1.3、C群が1.0±1.0を示し、B群が有意に高かったが(p<0.05)、右冠動脈では両群間に差は認めなかった。[総括]高脂食で誘導された冠状動脈硬化性病変の進展と強度は、冠状動脈炎の既往、特に動脈炎急性期の内皮細胞障害に伴う内皮下へ遊走した平滑筋細胞の長期的存続と密接に関連するものと推測された。
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