〔要旨〕平成7年度の研究で、離乳期家兎にself-limitedな冠状動脈炎を作成した後、その治癒血管炎が遠隔成熟期における早発粥状硬化の危険因子となること、更に粥腫の強さと抗平滑筋α-アクチン養成細胞(SMC)の発現度が比例することを明らかにし、更に治癒血管炎の内皮下に残存するSMCが粥腫形成の促進因子になることを推測した。 〔目的〕治癒血管炎の早発粥状硬化におけるマクロファージ(Mφ)とSMCの役割を明かにする。 〔方法〕離乳期家兎を4群に分け、冠動脈炎惹起群(A群)2群と対称2群(B群)を設けた。4群とも生後3ヶ月から5%コレステロール食を投与した。A・B群1組は2週間、他の1組は4週間投与後に屠殺し、左右冠動脈の粥腫の程度により、- + ++ +++と分類し、SMCおよびMφの出現比較を行った。 〔結果〕1.粥腫(-)〜(+)。MφまたはSMC陽性血管が12本(A群6、B群6)、そのうちMφ≧SMCが各5本、Mφ<SMCは各1本であった。2.粥腫(++)。すべてMφまたはSMCを認める計7本、A群は3本であり、内2本はSMCのみ、他の1本はSMC=Mφであった。3.粥腫(+++)。4本あったが、すべてMφ≧SMCであった。 〔総括〕粥腫が軽度または認めない血管では血管炎後遺病度がないため、AB群間に差が生じなかったと思われ、また高度の粥腫では血管後遺病変の影響が病態進行のため、マスクされたと考えられる。一方、中等度の粥腫ではA群でSMCが優位に出現していることから、残存SMCが粥状硬化の発症に重要な役割を果たしていると考えられる。
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