わが国における食生活の欧米化に伴い、肥満、高脂血症が成人のみならず小児においても問題と成っている。このような環境で川崎病既往が冠動脈粥状動脈硬化の危険因子になるかを検討する目的で家兎冠動脈炎モデルを使用して研究した。 (1)離乳徽家兎に惹起した冠動脈炎の急性期炎症像を遠隔期瘢痕像の血管内膜において、コレステロールを貪食し、泡沫細胞化する平滑筋細胞の残存を検討した。早期の単核球細胞満潤に次いで中膜からの平滑筋細胞の遊送を経て、内膜線維化に以降するに従い、抗α平滑筋アクチン陽性細胞は減少するが、人の思春期に相当する3生月においても、内膜線維性肥厚部には残存を認めた。 (2)離乳期に冠動脈炎惹起後、3生月から2ヶ月間5%高コレステロール食を投与し、粥腫の形成について同様にコレステロール食投与した対象の家兎と比較した。治癒血管炎群は粥腫の厚さと広がりが有意に大きかった。 (3)高コレステロール食投与による粥腫形成が治癒冠動脈炎家兎で促進する理由を検討するため高コレステロール食開始の初期段階に出現する泡沫細胞を検討した。内膜線維性肥厚部は平滑筋細胞、一方非肥厚部ではマクロファージ起源であった。 これらの結果は、血管炎性内膜肥厚部は平滑筋細胞の残存から粥状動脈硬化の危険因子となることを示し、さらに川崎病既往者の食生活に対する指導の必要性を示唆した。
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