研究概要 |
von Willebrand因子(vWF)と血小板膜蛋白(GP)Ib結合反応は正常流血状況では決して起らない。vWFは血管破綻部位の内皮下組織構成成分に結合することでGP Ib結合能を獲得するが、本研究はこの血管内皮下組織の未知vWF-GPIb結合促進物質の同定を目的としている。戦略としては、in vitro実験でvWF-GPIb結合反応を惹起することが知られる蛇毒蛋白ボトロセチン類似物質の生体内検索を試みた。平成7年度は、純化ボトロセチンをマウスに免疫し数種の抗ボトロセチンモノクロナール抗体を作製した。このうち私の確立したバインデイングアッセイ(JBC,266:18172-18178,1991)にてvWF-ボトロセチン結合を完全に阻害する抗体(BCI-7)を得ることができた。これを用いて、ヒト臍帯組織標本に対する反応性を免疫抗体法による光顕所見で検定したところ、臍血管内皮下組織にBCI-7に明らかに反応する領域を認めた。現在このBCI-7をマウス腹水にて大量生産中であり、これを用いて次年度以降の実験を進める予定である。現在までに、生体におけるvWF-GPIb結合反応惹起物質に関しては全く不明であり、血管内皮下組織に存在する各種コラゲンやヘパリン様プロテオグリカンが候補として考えられていたが決定的な証拠はなかった。この命題は血栓症成立メカニズムを考える上で極めて重要であり、本研究の平成7年度の進展はこの命題の解明に重要な意義を持つものと考えられる。
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