研究課題/領域番号 |
07670903
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
小児科学
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
井田 博幸 東京慈恵会医科大学, 小児科, 講師 (90167255)
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研究分担者 |
衛藤 義勝 東京慈恵会医科大学, 小児科, 教授 (50056909)
長谷川 頼康 東京慈恵会医科大学, 小児科, 助手 (60256435)
大橋 十也 東京慈恵会医科大学, 小児科, 講師 (60160595)
大野 典也 東京慈恵会医科大学, 微生物第一, 教授 (60147288)
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研究期間 (年度) |
1995 – 1996
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キーワード | 脳変性疾患 / 脳血液関門破壊 / 神経型ゴ-シェ病 / SSCP法 / 遺伝子変異分布 / 臨床表現型 |
研究概要 |
本研究の目的は、脳血液関門破壊による脳変性疾患の遺伝子治療である。これに先立ち昨年度までに、ゴ-シェ病とニーマンピック病患者の神経型の遺伝子解析を行い、神経症状とlinkする遺伝子変異を明らかにした。本年度は、神経型ゴ-シェ病の不明遺伝子変異を明らかにするためのSSCP法を用いて更に遺伝子解析を行い臨床症状との相関を検討した。 1)Genotype/Ethnicityについて ユダヤ人の遺伝子変異分布に比較し、非ユダヤ人GDにおいてはL444P変異が多く、84GD変異が存在しないことが遺伝子変異分布の特徴であることが報告されている。非血縁日本人GD32例の遺伝子解析により日本人GDにおいてはこれら両者と異なる遺伝子変異分布を呈することが明らかにされたが、症例数を増加させてもN37OS変異と84GG変異は日本人GDには存在しなかった。この事実は日本人GDの遺伝子変異の由来は欧米人とは異なることを示唆しているものと考えられる。さらにL444PとF213I以外にはCommon mutationは存在せず遺伝子変異分布がheterogenousであったことは、日本人GDにおける遺伝子変異による本症のスクリーニングは困難であり、また日本人GDの遺伝子変異はsporadicに発生したか、multi originであることを示していると考えられた。また、日本人GD神経型の遺伝子変異分布は諸外国と異なることも報告されており、GDにおいては人種が遺伝子変異分布を考えるうえで重要な因子と考えられた。2)Genotype/Phenotypeについて 非日本人GDタイプ1と日本人GDタイプ1の臨床症状の比較において、日本人のそれは非日本人に比べ重症であった。すなわち、発症年齢が年少で、脾摘率、骨合併症率が高率で、身体発育遅延が著明であった。N370S変異は軽微な臨床症状を呈するGDに多く認められる変異なので、この臨床的事実は日本人GDにN370S変異が全く同定されなかった結果に一致していると考えられた。このような遺伝子変異分布の差異による臨床症状の差異は酵素補充療法の投与量の決定などの治療法の差異にも影響を及ぼすと考えられ、日本人GDにおける適切な治療法についてのさらなる検討が必要である。 3)phenotype/Ethnicityについて L444P/L444Pの遺伝子型を持つ日本人GDとスウェーデンGDの臨床表現型が異なるという事実はGDの臨床表現型のみならず、人種差、すなわちGenetic backgroundもGDの臨床表現型を規定する因子の一つと考えられた。これを解明するにはハプロタイプの分析などが必要になってくると思われる。これに対しD409H/D409Hの遺伝子型を持つ患者においては、現在までのところ極めて類似した臨床表現型を呈し、しかもGDに非特異的な症状を示すことからこの変異蛋白質の酵素学的な解明が今後重要となってくるであろう。 以上のようにGDの臨床表現型は種々の要因の影響を受けるため極めて異質性が強く、個々の症例における遺伝子治療、酵素補充療法、骨髄移植という適切な治療法の選択、確立には臨床表現型についての更なる臨床的、基礎的研究が必要と考えられた。
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