研究分担者 |
井上 玲 東邦大学, 医学部・分子生物学研究室, 講師 (10151599)
山口 之利 東邦大学, 医学部・第2小児科学教室, 助手 (30277339)
藤岡 芳美 東邦大学, 医学部・第2小児科学教室, 助手 (30256739)
風間 浩美 東邦大学, 医学部・第2小児科学教室, 助手 (90224386)
清水 教一 東邦大学, 医学部・第2小児科学教室, 講師 (60256740)
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研究概要 |
遺伝性銅代謝異常症の代表的疾患であるWilson病の患者において,原因遺伝子の解析を行い,遺伝子異常のパターン(genotype)と病型(phenotype)との関連について検討を行った. 肝型Wilson病2例,神経型・肝神経型3例,発症前型1例および劇症型1例に対し解析を行った.肝生検を施行し得た症例は肝組織よりRNAを,他症例は末梢血よりgenomic DNAを抽出した.RT-PCR法,PCR-SSCP法,MDE gel電気泳動法,およびシークエンシング法を用いてこれらの症例の遺伝子異常を解析した.神経型・肝神経型Wilson病症例の遺伝子異常はイントロン4のスプライシング・アクセプターサイトにおけるTからGへの点突然変異によるエクソン5のスキッピング,あるいは4番目の膜透過部位におけるGからTへの点突然変異による,779番目のアルギニンからロイシンへのmissense mutation(R779L)であった.発症前型においてはこのR779L変異が認められた.肝型の1例は,compound heterozygoteであり,1つのalleleはR779L変異を持ち,他のalleleはエクソン14上のリン酸化部位におけるCからTへの変異により1030番目のアミノ酸がトレオニンからイソロイシンへと変化していた(T1030L).もう1例の肝型症例および劇症型Wilson病症例において,2874番目のCの1塩基欠失を認めた.この欠失によりフレーム・シフトが生じ,truncated proteinが作られるものと考えられた. 肝型(含む劇症型)と神経型・肝神経型において,homozygoteの症例を比較した場合,神経型・肝神経型にてはmissense mutationあるいはエクソン・スキッピングがみられ,肝型では1塩基対の欠失によるフレーム・シフト認められた.これらの結果より,Wilson病遺伝子の変異に伴う産生蛋白の形態あるいは機能異常の程度により,表現型が異なる可能性が示唆された。
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