研究概要 |
1)本態性起立直後性低血圧症例について平成8年度小児科学会近畿地方会(京都)において報告した。その概要を以下に述べる。 演題名:本態性起立直後性低血圧の15症例 発表内容:健常人が臥位から起立すると起立直後20秒以内に急激な一過性の血圧低下と速やかな回復や起こる。思春期になるとこの血圧低下がより増幅され、立ちくらみや全身倦怠感が顕著となり日常の活動性が低下する。このような病態を我々は起立直後性低血圧と称している。今回、本病態を伴いQOLが著しく低下していた15症例について臨床的に検討したので報告する。診断は、たちくらみや倦怠感の強い起立失調症状のある者で過去に報告した非観血的連続血圧測定装置(Finapres)による起立血圧試験が陽性(起立直後の血圧低下が起立前値の-60%以上または回復時間が25秒以上)な者とした。15例中、男子7名、女子8名(年齢10-16歳)であった。症状に季節変動はあるが、服薬が必須で経過は数年に及んだ。不登校傾向6名、不登校が2名存在し、心身医学的な配慮が必要であった。これらの症例は難治性起立性調節障害とも考えられ、我々は起立性直後性低血圧を起立性調節障害の下位分類に位置付けた。 2)起立性調節障害の循環病態を解明するために、我々は同患者54名に対して起立循環反応とそれに関与する自立神経機能を検討し報告した。起立時に低血圧発作を生ずる20名においては、末梢血管交感神経活動が低下しており、起立時の代償性頻脈によって生ずるBezold-Yarishe型自律神経反射のために末梢血管拡張が突然に生ずることが推測された。 Tanaka H,Yamaguchi H,Tamai H,Mino M,Thulesius O.Haemodynamic Changes during Vasodepressor Syncope in Children and Relevant Autonomic Function. Clin Physiol 1997;17:121-133
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