研究概要 |
我々は起立性調節障害中核群である起立直後性低血圧の診断基準を6歳〜18歳までの173名の健常小児のデータから決定した。さらにまた44名の小児起立直後性低血圧の臨床症状、起立時循環反応、カテコールアミン分泌を年齢マッチした健常時73名と比較検討した。診断基準は以下の通りである。 1群(軽症群):起立失調症状があり、非観血的連続血圧測定装置で記録した起立直後の平均血圧低下が安静時の60%以上または起立直後の血圧回復時間が25秒以上。 2群(重症群):軽症群の血圧反応があり、しかも安静時の15%以上の収縮期血圧の低下が持続するもの。この診断基準の感受性は100%、特異性は90.4%と非常に優れいている。1群、2群とも収縮期血圧の%変化率は健常群よりもはるかに大きかった。起立直後は各々、-53+-12,-50+-6 vs.-32+-16,p<0.001、起立1分後は、-6+-10,-24+-18 vs.6+-12,p<0.001、5分後は-5+-13,-21+-11 vs.8+-9,p<0.05であった。起立1分後の血清カテコールアミン増加量は、1群、2群とも健常群よりもはるかに少なく、各々、50+-63,33+-39 vs.99+-56pg/ml、また起立5分後では2群は健常群よりもはるかに少なかった。(218+-122,115+-78 vs.193+-98pg/ml)。INOHの身体症状は全身倦怠感は全患者の91%、立ちくらみは88%、疲れやすさは84%、睡眠障害は73%、失神発作は68%、頭痛は68%、食欲低下は57%腰痛は55%であった。特に、全身倦怠感、食欲低下、立ちくらみ、失神発作、朝起き不良の5項目が統計学的に特異的な症状であった。これらの結果から、INOHは起立時のノルアドレナリン分泌が低下しているために生ずるものと考えられるが、おそらくは中枢性の交感神経活動抑制に基づくものと思われる。2群ではより交感神経活動が低下しておりそのため、QOLた低下し不登校をも生ずることになる。INOHは起立調整障害小児において特に重要な病態であるが、その診断は非観血的連続血圧測定装置によって可能である。
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