本研究では、遺伝性腎炎(AIPORT症候群)におけるIV型コラーゲンα5鎖、α5(IV)の蛋白レベルでの異常を明らかにする目的で5α(IV)に対する特異的単クローン抗体(H51)を作成し、X-連鎖型遺伝性腎炎患者から生検で得られた腎組織でのα5鎖の異常を証明した。 〈成績〉 (1)α5(IV)のNC1ドメイン・ペプチドを合成し、単クローン抗体(H51)を作成した。この抗体はペプチド・マッピングによりIV型コラーゲンα1〜α4鎖とは反応せず、α5(IV)に特異的であることが明らかになった。 (2)正常ヒト組織でのα5(IV)の分布をH51を用いて蛍光抗体法で観察したところ、ヒト腎では糸球体基底膜、ボ-マン嚢、集合管に認められた。 (3)X連鎖型遺伝性腎炎の男性患者10人の腎組織ではα5(IV)は認められなかった. (4)良性家族性血尿5人、微小変化群ネフローゼ10人の腎組織ではα5(IV)染色は正常パターンであった。 〈結語〉 以上の成績から、X連鎖型遺伝性腎炎の男性患者では腎基底膜中のα5(IV)の蛋白レベルでの異常があり、蛍光抗体法によるα5(IV)染色は本症の診断に有用であると考えられる。
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