研究概要 |
X連鎖型Alport症候群(遺伝子腎炎)の病因はIV型コラーゲンのα5鎖[α5(IV)]の遺伝子異常であることが明らかになっているが、現在、本症に対する遺伝子診断の確率は高くない.したがって、抗体を用いた蛋白レベルでの診断が臨症上有用である.これまでの研究で我々は合成ペプチドをラットに免疫してα5(IV)に対する特異的単クローン抗体を作成し、正常では糸球体基底膜に分布しているα5(IV)がX連鎖型Alport症候群の男性患者の腎組織では欠如していることを明らかにした.加えて、本症の腎組織ではα3(IV),α4(IV)の蛋白レベルでの異常があり、さらに最近、α6(IV)蛋白の異常が存在することも知られている。一方、本症の家系の女性保因者ではα5(IV)は腎組織でモザイク状分布をしめす. この研究では、α5(IV)とα6(IV)に対する単クローン抗体を用いて正常皮膚組織10検体と本症男性患者(3家系3人)の腎と皮膚組織を免疫組織学的に検討した.その結果、正常ではα5(IV)とα6(IV)は皮膚の表皮基底膜に存在するが、患者ではα5(IV)とα6(IV)は全く陰性であった.患者の腎組織においてもこれらは陰性であった.また、本症家系内の女性保因者(2家系3人)では表皮基底膜でのモザイクパターンが認めらた.このことから,X連鎖型Alport症候群では腎と皮膚に共通してα5(IV)と6α(IV)の蛋白レベルでの異常があることが明らかになった. X連鎖型Alport症候群の患者のみならず保因者の診断において,皮膚組織でのα5(IV)染色は腎生検診断と同様に有用であり,かつ,より簡昜であると考えられる。特に、尿所見が軽微なために腎生検が躊躇される女性患者(保因者)の検出に有用である.
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