研究概要 |
新生児から成人までのΔ^4-3-oxo-bile acidsの正常値をあきらかにした。これによると生後速やかに3-oxo一Δ^4-steroid5β一reductaseの活性は高まり、尿中△^4-3-oxo-bile acidsは滅少する(生後1-3ヵ月以内に)ものの、1歳過ぎから再び微量ではあるが尿中に検出される。これは、腸内細菌により産生されたものと考えられた。 尿中Δ^4-3-oxo-bile acidsの分析定量による先天性胆道閉鎖症と他の乳児胆汁うっ滞症の鑑別は、総胆汁酸に対するΔ^4-3-oxo-bile acidsの割合で評価すると、明らかに(P<0.05)先天性胆道閉鎖症で高値を示した(vs.乳児胆汁うっ滞症、および正常コントロール)。しかしながら、最も間題となる先天性胆道閉鎖症と新生児肝炎との間では有意差はみられなかった。 さらに、本研究中に死亡した5β-reductase欠損症、劇症肝炎、肝硬変では、尿中Δ^4-3-oxo-bile acids組成は7α-hydroxy-3-oxochol-4-en-24-oic acidと3-oxochola-4,6-dien-24-oic acidが7α,12α-dihydroxy-3-oxochol-4-en-24-oic acidと12α-hydroxy-3-oxochola-4,6-dien-24-oic acidよりも多く検出された。このような尿分析結果を示す肝疾患は、予後が悪く肝移植を念頭に十分な観察が必要であることが明らかになった。この所見は、3-oxo-Δ^4-steroid 5β-reductase活性低下のみならず12α-hydroxyraseの活性低下も示唆する。 また、この研究中に本邦初の3-oxo-Δ^4-steroid 5β-reductase欠損症を経験し報告した。現在、本症が1次性か2次性かを明らかにすることが問題となっている。 以上より、早期に尿中異常胆汁酸(Δ^4-3-oxo-bile acids)の存在を知ることは予後および治療に重要であると共に、先天性胆汁酸代謝異常症の早期発見にも役立つと考えられた。
|