小児における聴覚に対する反応は発声や発話の発達にとって必須のものである。この加齢による変化は、EEGのいくつかの成分に関して、その潜時の短縮や振幅の変化などによって示されてきた。聴覚刺激に対する反応の発達的変化をより明瞭に、脳内の発生源の動態を含めて明らかにしていくことは、発声や発話の過程などの高次の認知の発達メカニズムを明らかにしていく上で重要であると思われる。このために、全頭型の脳磁界計測装置を用い、小児における聴覚刺激に対する脳磁界反応をまず測定し成人におけるものと比較検討した。 被験者は主として8歳から12歳の聴覚に問題のない健常な小児と同様に健常な成人に協力を願って実験した。聴覚刺激は純音や言語音を用意し、およそ2秒間隔、100回から120回提示され、加算処理を行った。音の提示は耳内挿入型のイアフォンを用い、実験は磁気シールドルーム内において施工された。脳磁界反応は、全頭型の64チャンネル脳磁界測定装置を用いて測定された。 刺激提示後100msce前後から280msec付近の脳磁界反応の分析では、早い潜時で8歳児での明瞭なダイポールはみえにくいが、10歳ぐらいになると、成人と類似の磁界パターンを示すことが多くなる。しかし、その後の潜時におけるダイポールの方向を含めた変化を継時的に追跡すると、それらの磁界パターンには小児と成人で若干の差異が認められた。これ以降の長潜時の成分では、個人によってかなりのバリエーションが存在した。これは成人においても、小児においてもいえることであった。
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