1.聴覚情報処理に関する成人と子どもの差異 高次の聴覚情報処理を研究した課題として脳波における聴覚事象関連電位に関する研究がある。しかし、成人と子どもの事象関連電位の異同など明らかになっていない部分は多い。我々は、全頭型の脳磁界計測装置を用い、小児における聴覚刺激にたいする脳磁界反応を測定し、成人におけるものと比較検討した。その結果、小児における反応は聴覚領周辺のものが成人に比して前景にたつ傾向がある。また、成人にはほとんどの場合現れる聴覚刺激開始後100msecぐらいの反応(N1m)は、7〜8歳では出現しないケースがあった。 2.言語音と純音に対する聴覚情報処理の比較 言葉の発声発語にかかわる聴覚情報の処理として、純音と言語音に対する聴覚情報処理を比較した。この比較に関して、成人のデータではいくつかの知見が存在する。ここでは、小児における脳磁界反応を測定し、比較した。刺激提示後450msec付近までの脳磁界反応を分析し、この付近で2-dipoleのパターンを明瞭に推定できる被験者の例で、純音の脳内の発声源と単音節語音の脳内の発生源の比較では、左半球において、差異が認められた。 3.発声に対する脳磁界反応 成人における発声に伴う脳磁界反応の測定を試みたが、実際には発声に伴う口周辺の動きの磁界への影響を出現しないように訓練するために大変時間がかかった。子どもでの実験ではさらに困難であった。ここでは成人における脳磁界反応を分析した。
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