以前より、臨床的に乾癬と溶連菌感染との関連性が示唆されていた。我々も、乾癬患者末梢血リンパ球の溶連菌抗原OK432に対する反応性を検討し、正常人コントロールに比して増殖反応が有為に低下していることを報告している。最近、東北大学歯学部細菌学教室、熊谷教授らのグループはOK432に由来する主なリンパ球増殖刺激は、溶連菌膜成分より抽出したcytoplasmic membrane-associated protein (CAP)に由来すること、さらに、CAPにはスーパー抗原としての活性が存在し、ヒトにおいてはVβ8型のT細胞受容体を有するT細胞群のみを選択的に刺激することを報告した。そこで、乾癬患者末梢血リンパ球がCAPに対して低応答性を示すか否か、また、示すとするならその機序を解析する。 そこで、乾癬患者および正常人コントロールより末梢血を採取し、溶連菌由来スーパー抗原CAP存在下に自己血清を含む培地中でリンパ球の幼若化反応を行った。その結果、乾癬患者末梢リンパ球には、CAPに対して正常人リンパ球と比較して有意に増殖反応の低下が存在することが明らかとなった。また、その反応性の低下が、正常人血清に置き換えることで著明に回復すること、また、正常人リンパ球の反応が乾癬患者血清に置き換えることで抑制されることが明らかなった。一方、血清中のCAPに対する中和抗体の量を検討したところ、正常人、乾癬患者で有意な差は存在しなかった。以上より、乾癬患者末梢血リンパ球には、溶連菌スーパー抗原CAPに対する低応答性が存在し、それが抗体以外の何らかの血清中の因子により主として抑制されていることが明らかとなった。
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