研究概要 |
ヒト臍帯血より単核細胞を分離した後,stem cell factorとinterleukin-6共存下に液体培養した。培養100日以上を経過するとほぼ100%の細胞がトリプテ-ス陽性となり,肥満細胞であることが確認された。その後,トリプテ-ス陽性肥満細胞を皮膚線維芽細胞と,あるいは皮膚線維芽細胞由来サイトカインと共生培養したが,トリプテ-スとカイメ-スのいずれにも陽性のヒト皮膚型肥満細胞を純培養することは出来なかった。そこで、ヒト皮膚肥満細胞と同様にサブスタンスPにより活性化されることが明らかにされているラット腹腔肥満細胞を用い,サブスタンスP刺激による肥満細胞からのヒスタミン遊離に及ぼす紫外線療法の効果について検討した。その結果,中波長紫外線(UVB)は照射量に依存して,ヒスタミン遊離を抑制した。また,8-メトキシソラレンと長波長紫外線(UVA)の併用(PUVA)は,UVAの量に依存して,ヒスタミン遊離を抑制した。また,UVBおよびPUVAの肥満細胞からのヒスタミン遊離抑制効果発現機序の1つとして,サブスタンスP刺激による細胞内カルシウムイオン濃度上昇が抑制されることを明らかにした。 肥満細胞症の1つである色素性蕁麻疹の皮疹部で増加する肥満細胞は,健常人皮膚に依存するトリプテ-スとカイメ-スのいずれにも陽性の肥満細胞であった。一方,無症候性全身肥満細胞症の健常皮膚に認められる肥満細胞もトリプテ-スとカイメ-スに陽性の肥満細胞であったが,皮疹部では肥満細胞の増加を認め,増加する肥満細胞はトリプテ-ス陽性の肥満細胞であった。また,無症候性全身肥満細胞症の症例に対し,ヒスタミンH_1受容体拮抗薬とヒスタミンH_2受容体拮抗薬の併用療法を行ったところ,血中及び尿中の肥満細胞由来メディエーター量の明らかな低下を認めた。
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