近年オゾン層の破壊によりUVC領域に近い有害な紫外線が地表に到達するようになってきており世界的に皮膚癌の増加が問題とされている。さらに日本では高齢化社会に伴い高齢者の癌が増加している。従って心疾患などの合併症の多い手術のリスクの高い高齢者の皮膚癌や比較的若年者でも顔面などの露光部に皮膚癌が多発することも予想され、Quality of Lifeの面から侵襲の少ない癌治療法の確立が望まれている。近年その1つとして光力学的療法(PDT)が注目されている。この治療法は腫瘍親和性のある光増感剤とレーザー光による特異的癌治療法である。光増感剤の一つであるヘマトポルフィリン誘導体は腫瘍親和性が高く毒性が低いため腫瘍細胞のみを選択的に障害させる点で副作用の少ない理想的な光力学的療法となる可能性がある。しかし、この腫瘍親和性も完全なものではなく吸収波長も短波長であり組織透過性の点から考えて深部の腫瘍に対しては有効と言い難い。そこで、より腫瘍親和性の高い新しい増感剤を用い励起光源として長波長のレーザーあるいはx線を用いることによってより有効な新しい治療法を確立することが本研究の目的である。 本年度は新しい光増感剤である5-アミノルブリン酸塩(ALA)を用い、C3Hマウスに移植継代可能な腫瘍を植え付け、レーザー単独照射群とALA投与後レーザー照射群(PDT群)に分類し比較検討した。その結果、PDT群の方が有意に腫瘍の成長は遅延し、組織学的に壊死が拡大し、腫瘍細胞のBrdUによる標識率が低下し、ALAによるPDTの有用性が確認された。これらの研究成果は日本皮膚科学会総会、日本研究皮膚科学会、日本光医学・光生物学会、日本レーザー学会において発表し、Photomedicine and Photobiologyに報告した。現在さらに他の光増感剤との比較検討し、活性酸素の生成やアポトーシスの誘導などについて検討中である。
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