走査電子顕微鏡で尋常性乾癬の爪甲の表裏を観察したところ、表裏とも角化細胞間に深い溝が認められ、角化細胞が浮き上がっている部分もあった。したがって角化細胞間の結合が低下しているものと思われた。 尋常性乾癬の爪甲の表裏を正常ヒト爪甲を測定した時と同じ条件でイオウの元素分析を行った。正常ヒト爪甲の表面では約9000カウント、裏面では約4000カウントであったが、尋常性乾癬の爪甲では表裏とも約3000カウントを示した。したがって尋常性乾癬の爪甲では表裏でイオウ含有量に差がなかったばかりか、正常ヒト爪甲よりも尋常性乾癬の爪甲の方がイオウ含有量が低いことがわかった。 正常ヒト表皮、尋常性乾癬の表皮、扁平苔癬の表皮を凍結切片にして、イオウの元素分析を行った。定量化が困難であったため、イオウのカウントを点状密度の変化として観察した。正常ヒト表皮では基底層、有棘層よりも顆粒層、角質層の方が密度か濃かった。しかし、尋常性乾癬の表皮では基底層から角質層まで密度に変化がなく、一定であった。扁平苔癬の表皮では正常ヒト表皮と同様の密度の変化が認められた。したがって尋常性乾癬では、角化に伴ってイオウ含有量がそれ程変化しないものと思われた。 尋常性乾癬の表皮を凍結切片にして、ジストロフィンの局在を観察した。正常ヒト表皮と同様に基底細胞の基底膜側には染色されなかったが、角化細胞間には十分に染色された。尋常性乾癬でもデスモゾームにジストロフィンが十分発現されていることがわかった。
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