研究概要 |
天疱瘡において、表皮細胞表面のデスモゾーム細胞膜貫通糖蛋白抗原に自己抗体が結合した後、棘融解を経て水疱形成に至るメカニズムについて、抗原抗体結合という表皮細胞表面における現象はシグナルとして細胞内に伝達されると考え、そのシグナル伝達系としてカルシウム-Cキナーゼ系の活性化が誘導されるか否かについて検討した。平成7年度には次の点について新しい知見が得られた。 1)天疱瘡抗体IgGを精製し、培養正常ヒト表皮細胞あるいはヒト有棘細胞癌由来表皮細胞の培養液中に添加したところ、約20秒後をピークとする細胞内カルシウム濃度およびイノシトール1、4、5三リン酸(IP_3)の一過性の上昇反応がみられた。この反応は類天疱瘡および健常人IgG添加ではみられなかったことから、天疱瘡においては抗体が細胞表面抗原に結合後、IP_3産生-カルシウム上昇を介した、カルシウム依存性シグナル伝達が誘導されると考えられた(J Invest Dermatol,104:33-37,1995に発表)。 2)天疱瘡抗体IgG添加後の培養表皮細胞におけるIP_3および細胞内カルシウム濃度の一過性の上昇は、ホスホリパーゼCに対する阻害剤により阻害された。また、天疱瘡抗体結合後に誘導されるプラスミノゲン・アクチベータの分泌もこの阻害剤によって阻害された(J Invest Dermatol,105:329-333,1995に発表)。 3)天疱瘡抗体IgGを添加した後に、培養表皮細胞において、Cキナーゼアイソザイムαおよびδが、細胞内局在の変化(細胞質画分より細胞膜画分への移行)を示すことを確認した。
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