研究概要 |
天疱瘡において、表皮細胞表面のデスモソーム細胞膜貫通糖蛋白抗原デスモグレイン1および3に自己抗体が結合した後、棘融解を経て水疱形成に至るメカニズムについて、抗原抗体結合という表皮細胞表面における現象はシグナルとして細胞内に伝達されると考え、そのシグナル伝達系としてカルシウム-Cキナーゼ系の活性化が誘導されるか、また、このシグナル系の誘導後にプロテイナーゼの活性化がおこるか、さらに表皮細胞間接着の離解が起こるか否かについて検討し、次のような新知見を得た。 1)まず、種々の自己免疫性水疱症の患者血清を得て、その血清中の自己抗体の検索を行った。2)天疱瘡抗体IgGを、培養正常表皮細胞あるいはヒト有棘細胞癌由来表皮細胞の培養液中に添加したところ、約20秒をピークとする細胞内カルシウム濃度およびイノシトール1,4,5三リン酸(IP3)の一過性の上昇反応が観察された。この反応は類天疱瘡および健常人IgG添加ではみられなかったことから、天疱瘡においては抗体が細胞表面抗原に結合後、IP3産生-カルシウム上昇反応を介した、カルシウム依存性シグナル伝達が誘導されると考えられた。3)天疱瘡抗体添加後の培養表皮細胞におけるIP3および細胞内カルシウム濃度の一過性の上昇は、ホスホリパーゼCに対する阻害剤により抑制された。また、天疱瘡抗体結合後に誘導されるプラスミノゲン・アクチベータ-の放出および表皮細胞間接着離解もこの阻害剤によって抑制された。4)次に、天疱瘡IgGを添加した後に、培養表皮細胞において、Cキナーゼアイソザイムαおよびδが、細胞内局在の変化(細胞質画分より細胞膜画分への移行)を示すことを確認した。
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