ヒトおよびラット皮膚においてiNOSが誘導されNOが産生されることが明らかとなった。乾癬をはじめ、アトピー性皮膚炎、扁平苔癬、水疱症、膠原病などの炎症性皮膚病変においてiNOSが表皮ケラチノサイトに発現されていることが認められたが、iNOSの発現様式は疾患によって異なっていた。乾癬ならびにアトピー性皮膚炎の表皮におけるiNOS発現の推移を調べると、ステロイド外用剤による治療によって皮膚症状の改善とともにiNOS発現の低下が観察された。2種類の実験的接触皮膚炎、すなわちアレルギー性および一次刺激性皮膚炎では、表皮におけるiNOS発現に明らかな差は観察されなかった。紫外線皮膚炎におけるNO関与では、少量の紫外線(UVB)照射によりケラチノサイトはNOの産生上昇を示した。マウスに紫外線照射を行い、照射前または照射後にNOSの阻害剤であるL-NAMEを腹腔投与し耳介腫脹を日焼け細胞数を測定すると、腫脹の程度および日焼け細胞数ともL-NAMEの投与により抑制された。一方、紫外線のマウス接触アレルギー反応抑制作用に対する効果を検討すると、L-NAME投与は紫外線の抑制作用に影響を示さなかった。今回の研究において、NOは紫外線の皮膚に対する直接障害に関与するものの、紫外線が及ぼす免疫反応には効果が認められないことが示された。アトピー性皮膚炎患者よりリンパ球を採取し、ケラチノサイトと混合培養しそのNO産生への影響を調べると、ケラチノサイトからのNO産生がアトピー性皮膚炎患者リンパ球では正常人リンパ球に比べて有意に増強することが認められた。以上の実験結果より、紫外線をはじめとする種々の起炎刺激に対して生じる皮膚炎や炎症性皮膚疾患にNOが関与していることが示唆された。
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